穏やかな クレーマー

私の事である。

 

できれば クレームを言わなければならない場面に遭遇したくはない。でも、そういった場面に出会うこともある。。。

 

例えば今日、とあるメーカーのソーセージを自宅で食べていた時、口の中に何やら妙な感触があり、「なんだ?これ??」と違和感のあったものを取り出してみたところ、ぺらっとした紙というかビニールの切れ端が出てきた。

大きさはとても小さいもので、間違えて飲み込んでしまっていたとしても喉につかえたり、内臓に異変が起きたりすることはなさそうな 何かの切れ端といった感じのもの。

 

それでも気になったので、母に「ソーセージからこんなの出てきたけど、会社に送ってみようかな?」 と打ち明けたところ、

「電話してから郵送しないと!!!  証拠をもみ消されたら大変。」

と 大げさ。  私は日本の企業を信頼しているので、  そんな汚いことはしないだろうと思ったものの、 パッケージの裏にあったお客様相談センターに電話を掛けた。

さすがは日本の大手、 とっても丁寧な対応でこの件を相談に乗ってくれた。

一番最初に 「お客様に お怪我はありませんでしょうか?」  と声をかけてくれるあたり、とても紳士的な印象を受けた(マニュアル通りなのだろうけれど、それでも相手を気遣う心はうれしい)。

出てきた異物をこちらで調査させていただきますので、まずはこちらからお客様のご自宅に 郵送用の封筒とビニール袋を2部(1つは異物を入れ、もう一つには商品が入っていたパッケージを入れて)、お手数おかけしますが、小社までご返送ください。

 

そういった対応の一つ一つが とても丁寧で 行き届いている。

 

調査の結果をお知りになりたいですか?

 

の問いに とても気になることなので お願いします ということで、 結果は電話でお知らせくださるという。   そこで、「お客様のお電話に出られやすいお時間がありますでしょうか?」 と こちらの都合まできちんと配慮がなされていて、私は感心しきりであった。

電話の最中、相手がとても親切なので、「ありがとうございます」という感謝の念が自然に私の口から出ると、傍で聞いていた母が

 

「ありがとうじゃないよ!!  子供が口にしていたらどうなっていたと思うんだ!!って言ってやんないと!!!!」  と口をはさむ。

 

私は無視する。

 

すべての電話が終わって、「よろしくお願いします」と電話を切る私。

終始 私は低姿勢の穏やかな対応を貫いた。

 

だって クレーム対応してくれた彼が悪いわけではない。

だって命に危険が及ぶような問題でもない。

たって どんなにきをつけていても 人間のすること、機械のすることには事故がおこるもの。

 

私はクレーム対応を担当された方が、私の暴言のよって「ったく 今日はついてないぜ!!  俺は1ミリも悪くないってのに罵声を浴びせられたぜ!!   もう!! とことん飲んでやる!!!!!」  とか思って キャバクラで煙草を吸いまくり、高いお酒を飲みまくり、大切なお金を散財した挙句、肝臓を傷つけ、明日の朝ひどい頭痛と最悪な気分で目覚めてほしくないのである。(そんなことそうそうしないと思うが。。。)

 

もっと言うなら、この妙なものを 誤ってソーセージに混入させてしまった職員さんが見つかったとしても、私は「こういう事故も起こりますよね。。。」 と慰めてあげたいくらいである。 担当者にも当人を叱らないでほしい。 今後 気を付けよう と全体に意識が向けばよい。 (偽善者か? 私は???)

 

でも、昔短期のアルバイトでクリスマスケーキを作る仕事を経験した私は、食品を扱う現場にいる人間が、どれほど衛生に気を配り、神経を使って仕事をするのか、身に染みてわかっている。  本当に努力している。  信頼を裏切ってはならないと。

 

だからこそ、小さなかみっぺらが出てきたとか、 回転ずしのサバの押しずしに髪の毛がついていた とか(これ、先週の事件)、そのくらいの出来事にはおおらかに、穏やかに対応するのである。

 

去年末、どうにも我慢ならない、 こちらも怒りに震えるようなサービス業に勤務されている方の所作にでくわしてしまったときには、さすがの私も鼻息荒く クレームしたものですが、、、、  そんなときでさえ、その事件を起こした相手の心を気遣うことは忘れなかった。

メールで そのショッピングモールあてに 事の成り行きをクレームした翌日に担当者が電話してきてくれたとき

「こんな時(年末の、新年を控えた時期)ですから、どうか本人をきつく責めたりすることのないようにお願いします。」

と私は頭を下げた。

だったらクレーム出すなよ!!! ってことだけど。

でも、その(クレームを出さないと気が済まないほど私を動かした)ケースの時は、さすがにこのままではいけないと思っていた。

 

簡単に言うと、リサイクルを回収する場所を設けてくれている大型ショッピングモールのリサイクル回収所で、 高齢のスタッフさんが 怒りをあらわに、回収されたガラスの瓶が割れるかの勢いでがっしゃんがっしゃんと 投げつけるように瓶を扱っていた場面に遭遇したのである。

 

いつもなら、そういった場所でお見掛けするスタッフさんに私は必ずこちらから挨拶をし、去る前には「お願いします」と声をかけるのだが、このときはそれさえもできないほどの剣幕で がっシャン ガっシャン と騒々しく、とても怖い思いをしたのである。  カナダでもそこまで荒れて働く人は見なかったぞ。。。

 

でもさ、大荒れだったあの男性も想像するに  年金では暮らしていけない日本で、こうして仕事をして、さらに税金を搾り取られているんであろう。。。

本来は、 「今までご苦労様でした」 とねぎらい 「これからはどうぞゆっくり老後を楽しく元気に過ごしてくだされ」  と生活に必要十分な年金を出してあげられる社会であるべきなところ。。。。。  それを税金で賄いきれなくて、定年退職を迎えた後もなお 生計をたてるべく 体に鞭打って働かせてしまっているんである、日本の社会が。

私は自分が怖い思いをしたことよりも、 彼があそこまで荒れてしまわなければならなかった理由に思いをはせるようになっていった。(クレームを会社に訴えるまでは 腹立たしい思いで必死だったのに、 時間というのは感情を冷静にさせてくれるものだ)

 

クレームのメールに、 「もしかしたら 彼はお客のリサイクルの出し方のマナーにほとほとあきれ返ったあげく、どうしようもなく腹が立っていたのかもしれませんから、上司にあたる方が、   「まあまあ、今の人間の意識は低いものです。OOさんにはお手間かけますが、どうかお願いします!!」  とか  「ここを頼る人の中にはだらしない人間もいますから。    もし耐えきれなかったらいつでも打ち明けてください、話を聞くことならできますから!!」  とか話してくださったら 改善されることかもしれませんから。 あまり本人は責めないでください。」  と綴った。

 

私は偽善者か????

 

その後、そのモールへ行くたびに彼を深く心配する。  私がきっかけで職を失ってしまっていないだろうか?  今もここで 以前より幸せに働くことができているだろうか? と。   こんなに心をざわつかせてしまうのならクレームなんて出さなきゃよかった。  本当に後悔している。

 

私がクレームを出すのは、「私に不便が生じた、謝れ!!」 というのではなく、

「私は怒らないけど、すっごい気を悪くする人もいるから、これから留意するヒントにしてください」

ということなんである。

 

私は偽善者か。。。。。