自然流産 In Canadaー1
息子を授かる前の話。
まだケベックで就労ビザしか持たない私が 健康保険に加入できるということさえも知らなかった頃のこと。
子父とお付き合いが始まり、でもうまく関係が築けないまま、くっついたり離れたりを繰り返していた時期のこと。
どうにかこうにか自分の気持ちを子父以外に向けようと 習い事をしてみたり、私なりに努力していたものの、職場で子父と毎日のように顔を合わせるから、忘れたくても忘れられないし、未練が尽きなかった私。
やっぱり信じられない!!
と踵を返したのは私だったのに、 そんな中、
「あれ? そういえば、 生理が来ていない。。。」
まさかと思いながら 薬局で検査薬を買って自宅で試したところ、説明書の2分待ってという結果の窓が みるみる 陽性 のラインでくっきりと色づいていった。
子父とは 冷戦状態で、職場で必要な業務連絡にさえも差し支えるくらい 固く殻に閉じこもっていた私は、試すように
「妊娠しているみたい。 どうしたらいいの?」
と子父に無表情で問い、
「そんなこと、僕に言われてもね。」
と当然のごとく無責任な返事をもらい 途方にくれる。
一人で病院の窓口に向かい、なんとか検診を受けられないものかとTryするものの、
「保険ないんでしょ? そもそも新患受け付けていないし。」
と断られ、途方にくれる。
町で一番大きな病院に行くと、受付に一人で留守番をしていた背の高い紳士が、私のつたない英語を聞いてくれ、もう事情を話すだけで涙が出てくる私に
「大丈夫!!心配しないで。 ここにまず電話してみるといいよ。」
と電話番号をメモして渡してくれた。
今度は優しさがせつなくて涙が出る。
泣きながらトボトボと自宅に戻り、手渡された番号に電話をかけると、相談に乗ってくれた係りの人が、町のSocial workerを紹介してくれ、担当者が自宅に訪問して詳しく相談に乗ってくれる運びに。
あ~、私は恋する相手を間違えたな。。。。。
窮地に立たされた自分を突き放す 子父に絶望。 慰めてくれた病院の警備員さんのような人を好きになっていたらよかった。。。。。 と思っていた。
紹介されたSocial workerのOfficeへ行くと、左手の薬指に大きなリング、子供さんが書いたと思われるクレヨンのイラストが壁に貼られていて、これからこの妊娠の行方を決めかねている私にはまぶしすぎた。
破れかぶれだった私は 産まない を前提に話を進め、紹介されたクリニックへ子父と向かい2人でカウンセリングを受けることになった。
エコーを見たDr.は
「胎嚢という袋がこれなんですが、ちょっと形がいびつなので、もしかしたら早い段階で流産してしまうかもしれません。」
と説明してくれた。 その診察の後で、子父がカウンセラーに話していた内容を私がカウンセリングを受けるときに聞き、自分の存在を全否定されたような気持になり、
では 中絶することを選びます
と言うと
「流産するかもしれないから中絶するって決めたわけ?」
とカウンセラーに責められる。
こんな両親の元に生まれても幸せになれないからです。
涙ながらに反論する私。
自宅に戻って一人、考えに考え、 果たしてそれは正しいのか? と自問自答を繰り返し、産もう。 という決意にたどり着く。
Social workerに 「産むという方向で進みます。 助けてください。」 とお願いし、そういったケースを扱う Social worker を紹介してもらい、家庭訪問の約束をしてもらう。
就労ビザで滞在中、低所得、独り身
そういった条件があったため、Social workerについてもらうことができたのだと思う。
担当してくれた女性は 私がケベック州の健康保険に加入できること、それにより医師の診察を無償で受けられることなどを調べてくれて、一緒に手続きをしてくれた。
本当はこういうこと、パートナーの子父にしてもらうべきだったのに、 2人の関係が破たんしていたから、赤の他人であるSocial workerに親身になって救ってもらわなくてはならず、情けなかったけれど、こうした仕事をしている人々に感謝の気持ちが大きくなった。 そして、カナダという国にも、さらなる愛情を感じた。
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